万有引力定数

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テンプレート:物理定数 万有引力定数(ばんゆういんりょくていすう)あるいは(ニュートンの)重力定数(じゅうりょくていすう、テンプレート:Lang-en-short)とは、重力相互作用の大きさを表す物理定数である。アイザック・ニュートン万有引力の法則において導入された。記号は一般に テンプレート:Mvar で表される。

ニュートンの万有引力理論において、それぞれ テンプレート:Mathテンプレート:Math質量を持つ2つの物体が、距離 テンプレート:Mvar だけ離れて存在しているとき、これらの間に働く万有引力 テンプレート:Mvarテンプレート:Indent となる。このときの比例係数 テンプレート:Mvar が万有引力定数である。SIに基づいて、質量 テンプレート:Mathテンプレート:Mathキログラム(kg)、長さ テンプレート:Mvarメートル(m)、力 テンプレート:Mvarニュートン(N、これは テンプレート:Nowrap に等しい)を用いれば単位は テンプレート:Nowrap、万有引力定数 テンプレート:Mvar の単位は テンプレート:Nowrap となる。

アインシュタイン一般相対性理論においては、ニュートンの重力理論に対する修正と拡張が為され、一般相対性理論の基礎方程式であるアインシュタイン方程式においても比例係数としてこの重力定数が現れる。

万有引力定数の2018年CODATA推奨値は

テンプレート:Math

である[1]。括弧内の数値は表された最後の桁を単位とした数値の標準不確かさを表す。上記の定数は、質量 テンプレート:Val の2つの質点が テンプレート:Val 離れた時の引力を単位ニュートン (N) で表した値と等しく、非常に小さい値である。たとえばそれぞれの重心が互いに テンプレート:Val 離れた1トン (=テンプレート:Val) の物体が引き合う力は約 テンプレート:Val であり、地球上で おおよそ テンプレート:Val の質量の物体に働く重力に等しい。

また、万有引力定数をプランク定数真空光速で換算した量は

テンプレート:Math

である[2]

キャヴェンディッシュによる測定

万有引力定数を定めるには、互いに質量のわかっているものの間に働く万有引力を精密に測定せねばならない。万有引力定数はキャヴェンディッシュによる1798年の鉛球実験(キャヴェンディッシュの実験)に基づいて初めて計測された。これは針金で吊るした棒の両端に二つの鉛球をつけ、固定した別の鉛球との間に働く力を計測するものであった。この実験はもともと地球の密度を求めるためのものとして考案されたもので、万有引力定数が求められたことによって、既知の重力加速度と地球の半径から地球の質量そして密度がはじめて求められた。この実験で求められた万有引力定数は テンプレート:Val であり、現在知られている上記の値と比較しても相当に高精度なものであった。

精度の低さ

万有引力は非常に弱い力であるとともに負の質量が存在しないため、静電遮蔽のような効果を用いることができず、また周囲の物質による影響が除去しにくいため測定が非常に難しい。

上に示したCODATA 2018の値にも、2.2テンプレート:E- の相対標準不確かさがあり、また以下の表に示したCODATA推奨値も、少数第2位の6.67までしか確定しておらず、この不確かさ(誤差)は様々な重要な物理定数の中では最も大きい[3][4][5]

このような測定精度の低さのためCODATA推奨値も時代と共に以下のように変遷している[6]。CODATA 2018推奨値とCODATA 2014推奨値との差は、3.3テンプレート:E- もあり、基礎物理定数としては変化が極めて著しい。

万有引力定数のCODATA推奨値の変遷[7]
推奨値 テンプレート:Mvar / mテンプレート:Supkgテンプレート:Sup-sテンプレート:Sup- 相対標準不確かさ
1973 CODATA[8] 6.6720(41)テンプレート:E- 6.1テンプレート:E-
1986 CODATA 6.672 59(85)テンプレート:E- 1.3テンプレート:E-
1998 CODATA 6.673(10)テンプレート:E- 1.5テンプレート:E-
2002 CODATA 6.6742(10)テンプレート:E- 1.5テンプレート:E-
2006 CODATA 6.674 28(67)テンプレート:E- 1.0テンプレート:E-
2010 CODATA 6.673 84(80)テンプレート:E- 1.2テンプレート:E-
2014 CODATA 6.674 08(31)テンプレート:E- 4.7テンプレート:E-
2018 CODATA 6.674 30(15)テンプレート:E- 2.2テンプレート:E-

万有引力定数の精度が4桁程度しかない(小数点以下が2位までしか確定していない)ことは、連星パルサーの質量の測定精度などにも影響する。また、ミリメートル以下の範囲でニュートンの万有引力が精度良く確かめられていないことから、小さなスケールでは重力理論の変更を考慮する余地が残されていて、近年、小さなスケールで余剰次元を持つ5次元膜宇宙モデル(ブレーンワールドモデル)が盛んに研究されている。

その他の値

国際測地学協会では1999年に万有引力定数の値として テンプレート:Math を用いることを定めている[9]アメリカ航空宇宙局(NASA)もこの値を採用している[10]

2007年には原子干渉計を用いた測定による万有引力定数として、テンプレート:Math というそれまでの測定結果とは著しく異なった値がサイエンスに報告された[11]

天体の質量との積

万有引力定数の測定精度が低いのに対し、テンプレート:Mvar太陽質量 テンプレート:Math を乗じたテンプレート:仮リンクや、地球質量 テンプレート:Math を乗じた地心重力定数は精度よく計測されている。 これらの値は各々、 テンプレート:Indent テンプレート:Indent である[12]

従って、地球質量の精度は万有引力定数の測定精度に依存し、CODATA 2006による地球質量は テンプレート:Math と計算され[12]、国際測地学協会の協定値では テンプレート:Math と計算される。NASAでは テンプレート:Math としている[13]

一般相対性理論とアインシュタインの重力定数

アルベルト・アインシュタイン一般相対性理論においては、重力場を記述するアインシュタイン方程式の中に万有引力定数 テンプレート:Mvar が現れる。アインシュタイン方程式は テンプレート:Indent と表される。左辺の テンプレート:Mvar は時空の曲率を表したアインシュタイン・テンソルと呼ばれるテンソルであり、テンプレート:Math は「宇宙定数」と呼ばれる定数で、テンプレート:Mvar は時空の計量テンソルと呼ばれるテンソルである。また、右辺の テンプレート:Mvar は物質分布を示すエネルギー・運動量テンソルであり、右辺の係数をまとめた テンプレート:Math は、アインシュタインの重力定数と呼ばれることもある。

なお、左辺の テンプレート:Mvar は、リッチテンソル テンプレート:Mvarスカラー曲率 テンプレート:Mvar 及び時空の計量テンソル テンプレート:Mvar を用いると テンプレート:Math とも表わされる。

脚注

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注釈

テンプレート:Reflist

出典

テンプレート:Reflist

参考文献

関連項目

外部リンク

  1. CODATA Value
  2. CODATA Value
  3. 例えば、Mohr et al. (2012) p.1594, TABLE XLVIII.
  4. Mohr et al. (2012) pp.1587-1591
  5. Mohr et al. (2012) p.1583, FIG. 6.
  6. "Older values of the constants"
  7. 1982年から2010までの主な測定結果については、Mohr et al. (2012) p.1567, TABLE XVII. が参考になる。
  8. Cohen and Taylor
  9. 『理科年表2009』
  10. "Astrodynamic Constants"
  11. Fixler, Foster, McGuirk, and Kasevich
  12. 12.0 12.1 "Selected Astronomical Constants" ただし値は時刻系の違いに依存し、示された値は太陽系座標時TCBBarycentric Coordinate Time)を用いて表されたものである。
  13. "Earth Fact Sheet"