1+2+3+4+…のソースを表示

[[File:Sum1234Summary.svg|thumb|upright=1.35|級数 {{math|1 + 2 + 3 + 4 + …}} の部分和の最初の四項。放物線はその平滑化漸近線であり、実はその {{mvar|y}}-切片の値が {{math|&minus;{{sfrac|1|12}}}} に等しい|alt=A graph depicting the series with layered boxes and a parabola that dips just below the {{mvar|y}}-axis]]
[[自然数]]すべての総和 {{math|'''1 + 2 + 3 + 4 + …'''}} は、その {{mvar|n}}-次の[[級数#定義|部分和]]
: <math>\sum_{k=1}^n k=\frac{n(n+1)}{2}</math>
が[[三角数]]によって与えられる[[無限級数]]。これは {{mvar|n}} を[[無限大]]に飛ばすとき際限なく増加するため、この級数は（正の無限大に）[[発散級数|発散]]し、通常の意味での「和」を持たない。

一見するとこの級数が意味のある値を持つことは全くないように思われるが、これに数学的に意味のある値を結びつける方法があり、そうして得られた値は[[複素解析]]や、物理学における[[場の量子論]]、特に[[弦理論]]などの分野において応用がある。様々な[[総和法]]を用いることで、上記のごとき発散級数にさえ有限な数値を'''割り当てる'''ことができ、特に[[ゼータ関数正規化]]や[[ラマヌジャン総和法]]では件の級数に {{math|&minus;{{sfrac|1|12}}}} を値として割り当てる。この事実をよく知られた公式
:<math>1+2+3+4+\dotsb =-\frac{1}{12}</math>
として式に表す{{sfn|Lepowsky|1999|pp=327-340}}。[[モンストラス・ムーンシャイン|モンスター群のムーンシャイン現象]]に関するモノグラフで{{仮リンク|テリー・ガノン|en|Terry Gannon}}はこの等式を「自然科学において最も注目すべき公式の一つ」と評した{{sfn|Gannon|2010|p=140}}。

== 部分和について ==
[[File:First six triangular numbers.svg|thumb|三角数の最初の六項]]
{{Main|三角数}}
級数 {{math|1 + 2 + 3 + 4 + 5 + …}} の部分和は順に {{math|1, 3, 6, 10, 15, …}} と続き、第 {{mvar|n}} 部分和は簡単な公式
:<math>\sum_{k=1}^n k=\frac{n(n+1)}{2}</math>
によって与えられる。この等式は[[ピタゴラス学派]]によって紀元前6世紀ごろには早くも知られていた{{sfn|Pengelley|2002|p=3}}。この形で与えられる数は、各項を点を三角形状に並べることで数えられることから、[[三角数]]と呼ばれる数である。

三角数からなる無限数列は {{math|+∞}} に発散するから、定義により無限級数 {{math|1 + 2 + 3 + 4 + …}} もまた {{math|+∞}} に発散する。これが発散することは「項が {{math|0}} に[[極限#数列の極限|収束]]しないならば級数は発散する」という{{仮リンク|項による発散判定法|en|Term test|label=項判定法}}の単純な帰結でもある。

=== ゼータ関数の部分和 ===
[[リーマンゼータ関数]]を部分和にした

<math>P_s(n)=\sum_{k=1}^nk^{-s}</math>

を複素平面上にプロットした時、<math>s</math>の虚部に対して<math>n</math>が十分大きくなると[[対数螺旋]]のような軌跡を描く。その軌跡の中心は元となったゼータ関数の値に近似していることが観測されており<ref>Carl,Erickson(2005),''[http://web.stanford.edu/group/journal/cgi-bin/wordpress/wp-content/uploads/2012/09/Erickson_NatSci_2005.pdf A Geometric Perspective on the Riemann Zeta Function's Partial Sums]''</ref>、<math>s</math>の実部を<math>-1</math>として虚部を十分小さくした時にこの方法で<math>P_s(n)</math>を観測すると{{math| &minus;{{sfrac|1|12}}}}に近似する。

== 総和可能性について ==
様々知られた古典的な発散級数の中でも {{math|1 + 2 + 3 + 4 + …}} は有限値へ持ち込むことが比較的難しい。発散級数に有限な数値を割り当てる[[総和法]]は多数存在するが、それらの中には総和法としての強さが比較可能なものがある。例えば、[[チェザロ総和法]]は緩やかに発散する[[グランディ級数]] {{math|1 &minus; 1 + 1 &minus; 1 + …}} を {{math|{{sfrac|1|2}}}} に総和することはよく知られているが、[[アーベル総和法]]はグランディ級数を {{math|1/2}} に総和するのみならず、より扱いの難しい級数 {{math|[[1 &minus; 2 + 3 &minus; 4 + …]]}} までも {{math|{{sfrac|1|4}}}} に総和することができる。

これらの級数と異なり、{{math|1 + 2 + 3 + 4 + …}} はチェザロ総和可能でもアーベル総和可能でもない。これらの総和法が適用できるのは収束級数と振動級数に対してのみであり、{{math|+∞}} に発散する級数については有限な値を生み出すことはできないのである{{sfn|Hardy|1949|p=10}}。そこでより発展的な総和法が必要になるのであるが、それは例えばゼータ関数正規化やラマヌジャン総和法である。だいたいそういった方法による経験論を用いて、この級数の値が {{math|&minus;{{sfrac|1|12}}}} であると論ずることができる。

=== ヒューリスティックな説明 ===
[[Image:Ramanujan Notebook 1 Chapter 8 on 1234 series.jpg|thumb|upright=1.8|[[シュリニヴァーサ・ラマヌジャン|ラマヌジャン]]の最初のノート。級数に対する「定数」を書いた一節。|alt=Passage from [[:en:Srinivasa Ramanujan|Ramanujan]]'s first notebook describing the "constant" of the series]]
[[シュリニヴァーサ・ラマヌジャン|ラマヌジャン]]は彼のノートブックの8章において "{{math|1 + 2 + 3 + 4 + … {{=}} &minus;{{sfrac|1|12}}}}" の導出を二種類の方法で与えている<ref>[[#Ramanujan-Notebook-1-8|ラマヌジャンのノート第 1 巻 8 章]]</ref>{{sfn|Abdi|1992|p=41}}{{sfn|Berndt|1985|pp=135-136}}。厳密さをさておいて簡単に述べれば以下のようなことになる。

考察の第一の鍵は、正項級数 {{math|1 + 2 + 3 + 4 + …}} が[[交項級数]] {{math|1 &minus; 2 + 3 &minus; 4 + …}} にきわめてよく似ていることである。後者の級数もまた発散するのであるが、扱いは極めて容易で、これに値を割り当てる古典的な総和法がいくつか存在し、それは18世紀にはすでに発見されていた{{sfn|Euler|1768|pp=83-106}}。

さて級数 {{math|1 + 2 + 3 + 4 + …}} を級数 {{math|1 &minus; 2 + 3 &minus; 4 + …}} に変形するのに、第二項から {{math|4}} を引き、第四項から {{math|8}} を引き、第六項から {{math|12}} を引き……、という具合にやって行けば、引かれる総量は {{math|4 + 8 + 12 + 16 + …}} でこれはもとの級数の {{math|4}} 倍である。これを少し代数学的に書いてみよう。この級数の「和」となるべきものがあるとしてそれを {{math|''c'' {{=}} 1 + 2 + 3 + 4 + …}} と呼ぶことにすると、これを {{math|4}} 倍してもとの式から引けば
:<math>\begin{alignat}{7}
c &{}={} &1+2 & &{}+3+4 & &{}+5+6+\cdots \\
4c &{}={} &4& &{}+8 & &{}+12+\cdots \\
-3c &{}={} &1-2 & &{}+3-4 & &{}+5-6+\cdots \\	
\end{alignat}</math>
を得る。

考察の第二の鍵は、交項級数 {{math|1 &minus; 2 + 3 &minus; 4 + …}} が {{math|1/(1 + ''x''){{sup|2}}}} の形式冪級数展開に {{math|''x'' {{=}} 1}} と代入したものになっていることである。ラマヌジャンのノートに従えば
:<math>-3c=1-2+3-4+\cdots=\frac{1}{(1+1)^2}=\frac{1}{4}</math>
の両辺を {{math|&minus;3}} で割って、{{math|''c'' {{=}} &minus;{{sfrac|1|12}}}} を得る。

一般論で言えば、無限級数を（特に発散級数を）有限和と同様のものであるかのように扱うことは危険である。例えば発散級数に対してその任意の位置に無数の {{math|0}} を挿入することでさえ、自己矛盾した結果を導き得る（まして他と整合する結果であることをあらかじめ望むべくもない）。特に、{{math|4''c'' {{=}} 0 + 4 + 0 + 8 + …}} とした手順は、単に[[加法単位元]]の基本性質のみで正当化することができるものではないのである。さらに極端な例として、級数の先頭にたった一つ {{math|0}} を付け加えるだけで矛盾した結果を導くことができることさえある{{sfn|Tao|2010}}。

この状況を改善して {{math|0}} の挿入可能な場所を制限する一つの方法は、適当な関数に従って配置することによって各項のつながり方を保つことである{{efn|数を関数に昇華して考えることは、二つの広汎な総和法のクラスの、アーベル総和法やボレル総和法などを含む一派として理解することができる{{sfn|Knopp|1990|pp=475-476}}。}}。級数 {{math|1 + 2 + 3 + 4 + …}} における各項 {{mvar|n}} は単なる数であるが、ここで項 {{mvar|n}} を複素変数 {{mvar|s}} に関する関数 {{math|''n''{{sup|&minus;''s''}}}} へ昇華するならば、項が足し合わされるというようなことだけについては保証することができるようになる。そうして得られた級数はより厳密な取扱いができるようになるし、そのあとで変数 {{mvar|s}} を {{math|&minus;1}} に特殊化することもできる。こういった手法を形にしたものが[[ゼータ関数正規化]]である（[[#ゼータ関数正規化|後述]]）。

=== {{anchors|ゼータ函数正規化}}ゼータ関数正規化 ===
[[File:Zeta plot.gif|thumb|upright=1.4|リーマンゼータ {{math|''ζ''(''s'')}} のグラフ。{{math|''s'' > 1}} で級数は収束し {{math|''ζ''(''s'') > 1}} であることがわかる。極 {{math|''s'' {{=}} 1}} の周りでの解析接続によって負の領域まで延長すれば {{math|''ζ''(&minus;1) {{=}} &minus;{{sfrac|1|12}}}} などの場合も含まれる。]]
'''ゼータ関数正規化''' {{en|(zeta function regularization)}} において、級数 <math>\scriptstyle \sum_{n=1}^\infty n</math> は級数 <math>\scriptstyle \sum_{n=1}^\infty n^{-s}</math> に置き換えられる。後者の級数は[[ディリクレ級数]]の一例である。複素変数 {{mvar|s}} の実部が {{math|1}} より大きいときこのディリクレ級数は[[絶対収束|収束]]し、その和は[[リーマンゼータ関数]] {{math|''ζ''(''s'')}} に等しい。一方、実部が {{math|1}} 以下のときこのディリクレ級数は発散し、特に級数 {{math|1 + 2 + 3 + 4 + …}} は {{math|''s'' {{=}} &minus;1}} と置いたものだから、{{math|1 + 2 + 3 + 4 + …}} は発散する。リーマンゼータ関数を導入するメリットは、そうすれば {{mvar|s}} に関する[[解析接続]]によって級数の収束領域の外側まで矛盾なく定義することができることにある。そうして、級数 {{math|1 + 2 + 3 + 4 + …}} のゼータ関数正規化された「和」を {{math|''ζ''(&minus;1) {{=}} &minus;{{sfrac|1|12}}}} と定義するのである{{efn|より一般に、{{math|''ζ''(''s'')}} の値は {{math|{{sum|''n''{{=}}1|∞}} ''n''{{sup|&minus;''s''}}''e{{sup|hn}}''}} の {{math|''h'' {{=}} 0}} の周りでの[[ローラン展開]]の定数項として常に与えられる。}}。

ところで、{{math|''ζ''(&minus;1) {{=}} &minus;1/12}} を証明する方法はいくつか知られている。一つの方法はオイラーの論法に沿ったもので、リーマンゼータ関数と{{仮リンク|ディリクレイータ関数|en|Dirichlet eta function}} {{math|''η''(''s'')}} との間の関係を用いる{{sfn|Stopple|2003|p=202}}。このイータ関数は交代ディリクレ級数によって定義されるもので、故にこの方法は古き経験論的方法をなぞるものである。両ディリクレ級数が収束する領域において、等式
:<math>
\begin{alignat}{8}
\zeta(s) &{}={} &1^{-s}+2^{-s} & &{}+3^{-s}+4^{-s} & &{}+5^{-s}+6^{-s}+\cdots & \\
2\cdot2^{-s}\zeta(s) &{}={} &2\cdot2^{-s} & &{}+2\cdot4^{-s} & &{} +2\cdot6^{-s}+\cdots & \\
\left( 1-2^{1-s} \right) \zeta (s) &{}={} &1^{-s} -2^{-s} & &{}+3^{-s}-4^{-s} & &{}+5^{-s}-6^{-s}+\cdots &=\eta(s) \\	
\end{alignat}</math>
が成り立ち、この等式 <math>(1-2^{1-s} )\zeta (s)=\eta(s)</math> は、上記の級数が発散する領域の ''s'' に対しても、解析接続によって延長すれば保たれる。故に {{math|''s'' {{=}} &minus;1}} を代入して {{math|&minus;3''ζ''(&minus;1) {{=}} ''η''(&minus;1)}} を得るが、このイータ関数はこの級数を定義するアーベル和に等しいから {{math|''η''(&minus;1)}} は容易に計算できる{{sfn|Knopp|1990|pp=490-492}}。つまり、[[片側極限]]
:<math>-3\zeta (-1)=\eta (-1)=\lim_{x\nearrow 1} \left( 1-2x+3x^2 -4x^3 +\cdots \right) =\lim_{x\nearrow 1} \frac{1}{(1+x)^2} =\frac14</math>
が求まって、両辺を {{math|&minus;3}} で割れば、{{math|''ζ''(&minus;1) {{=}} &minus;{{sfrac|1|12}}}} を得る。

=== 平滑化漸近線 ===
{{Multiple image
|image1 = Sum1234Plain.svg
|alt1 = 級数を矩形を並べたものとして表したグラフ
|caption1 = 級数 {{math|1 + 2 + 3 + 4 + …}}
|image2 = Sum1234Smoothed.svg
|alt2 = 級数を滑らかな曲線で抑えられる領域として表したもの
|caption2 = 平滑化したもの
}}
[[File:Sum1234Asymptote.svg|thumb|平滑化の漸近的挙動。この抛物線の {{mvar|y}}-切片は {{math|&minus;1/12}} である{{sfn|Tao|2010}}。 |alt= 抛物線の {{mvar|y}}-切片が {{mvar|x}}-軸よりも下へ沈み込んでいることが見て取れる]]
[[テレンス・タオ]]は級数の平滑化によって {{math|&minus;{{sfrac|1|12}}}} が得られることを指摘している。平滑化はゼータ関数正規化（[[複素解析]]を背景とする）とラマヌジャン総和法（[[オイラーの和公式|オイラー＝マクローリンの公式]]の便法）とを概念的に橋渡しするものである。これは、保守的な級数変化法を直接操作する代わりに、[[実解析]]の方法論を用いるのである。

この考えは、[[病的な (数学)|素性の悪い]] {{en|(ill-behaved)}} 離散的級数 <math>\scriptstyle \sum_{n=0}^N n</math> を、よい性質 {{en|(well-behaved)}} の[[軟化子|カットオフ関数]] {{mvar|f}} を用いて、その滑らかな変形版 <math>\scriptstyle \sum_{n=0}^\infty nf(n/N)</math> で置き換える。このカットオフ関数は {{math|''f''(0) {{=}} 1}} に[[正規化]]されていなければならない{{efn|これは微分方程式において用いられる正規化とは異なる}}。カットオフ関数は級数の悪い点を滑らかにするために充分に有界な導関数を持ち、級数の増加よりも早く {{math|0}} に減少する必要がある。便宜のため、{{mvar|f}} は[[滑らかな関数|滑らか]]で[[有界関数|有界]]かつ[[台#コンパクト台付き関数|台がコンパクト]]であるものと仮定する。このとき、この平滑化された和が {{math|&minus; {{sfrac|1|12}} + ''CN''{{sup|2}}}} に[[漸近線|漸近]]することが示される（ただし {{mvar|C}} は {{mvar|f}} に依存して決まる定数）。この漸近展開の定数項は {{mvar|f}} の選び方に依らないが、これが必ずしも解析接続によって得られる値 {{math|&minus;{{sfrac|1|12}}}} と同じであると決まっているわけではない{{sfn|Tao|2010}}。

=== ラマヌジャン総和法 ===
{{math|1 + 2 + 3 + 4 + …}} の{{仮リンク|ラマヌジャン総和法|en|Ramanujan summation|label=ラマヌジャン和}}も {{math|&minus;{{sfrac|1|12}}}} になる。[[ゴッドフレイ・ハロルド・ハーディ|ハーディ]]へ宛てたラマヌジャンの二通目の書簡 (1913年2月27日付け) には 
{{quote|"Dear Sir, I am very much gratified on perusing your letter of the 8th February 1913. I was expecting a reply from you similar to the one which a Mathematics Professor at London wrote asking me to study carefully Bromwich's ''Infinite Series'' and not fall into the pitfalls of divergent series. … I told him that the sum of an infinite number of terms of the series: {{math|1 + 2 + 3 + 4 + … {{=}} &minus;{{sfrac|1|12}}}} under my theory. If I tell you this you will at once point out to me the lunatic asylum as my goal. I dilate on this simply to convince you that you will not be able to follow my methods of proof if I indicate the lines on which I proceed in a single letter. …"<ref>Berndt et al. [https://books.google.com/books?id=Of5G0r6DQiEC&pg=PA53&dq=gratified p. 53.]</ref>}}
{{quote|（{{訳語疑問点範囲|date=2014年1月|やあ先生、1913年2月8日付の手紙を熟読してすごく満足したよ。僕は、ロンドンのどこかの数学教授と同じように先生も「{{仮リンク|トーマス・ジョン・イアンソン・ブロムウィッチ|label=ブロムウィッチ|en|Thomas John I'Anson Bromwich}}の『無限級数』を用心深く学んで、発散級数の落とし穴に嵌らないようにしなさい」なんて返事すると思ってたんだ。……無限個の項を持つ数列の和：{{math|1 + 2 + 3 + 4 + …}} が僕の理論では {{math|&minus;{{sfrac|1|12}}}} になると言ったときのように。こんなことを僕が言い出したら、先生はすぐ僕に精神病院送りになるぞと忠告するだろう。僕がこれを書くのは単に、一通の手紙に書けるだけの証明では先生が僕の方法を追えないかもしれないってことを、先生に納得してもらうためです。…}}）}} と書かれている。

ラマヌジャン総和法は、級数の部分和に対する[[オイラーの和公式|オイラー＝マクローリンの公式]]の定数項だけを分離する方法である。関数 {{mvar|f}} に対して、級数 <math>\scriptstyle \sum_{k=1}^\infty f(k)</math> の'''古典ラマヌジャン和''' {{en|(classical Ramanujan sum)}} は
: <math>c=-\frac{1}{2}f(0)-\sum_{k=1}^{\infty}\frac{B_{2k}}{(2k)!}f^{(2k-1)}(0)</math>
で定義される。ここで {{math|''f''&thinsp;<sup>(2''k''&minus;1)</sup>}} は {{mvar|f}} の {{math|(2''k'' &minus; 1)}}-階導関数で {{math|''B''<sub>2''k''</sub>}} は {{math|2''k''}}-番目の[[ベルヌーイ数]]である ({{math|''B''<sub>2</sub> {{=}} 1/6}}, {{math|''B''<sub>4</sub> {{=}} &minus;1/30}}, ……)。
{{math|''f''(''x'') {{=}} ''x''}} とすれば ''f'' の一階導関数が {{math|''f''&thinsp;{{sup|(1)}} {{=}} 1}} で残りはすべて消えるから、
:<math>c=-\frac16 \cdot \frac{1}{2!} =-\frac{1}{12}</math>
を得る{{sfn|Berndt|1985|pp=13,134}}。

矛盾が起きるのを避けるため、ラマヌジャン総和法の現代的理論では、{{mvar|f}} の高階導関数が「オイラー＝マクローリンの公式の[[剰余項]]が {{math|0}} に収束するのに充分な速さで減少する」という意味の「正則性」を持つことを要求する。ラマヌジャンはこの性質を暗に仮定している{{sfn|Berndt|1985|pp=13,134}}。この正則性を課すことによって、そのような正則な関数をとることができない {{math|0 + 2 + 0 + 4 + …}} のような病的な級数にラマヌジャン総和法が適用されることは防げる。そのような級数について、ラマヌジャン和の代わりにゼータ関数正規化によって解釈されるべきである。この理由を以ってハーディは、既知の級数のラマヌジャン和を関連する級数の和を求めるのに用いるときには「厳重な注意」{{en|("great caution")}} を要すると述べた{{sfn|Hardy|1949|p=346}}。

== 物理学での応用 ==
{{仮リンク|ボゾン弦理論|en|bosonic string theory}}では、弦の取り得るエネルギー準位、とくに最低エネルギー準位を計算することが試みられる。砕けた言い方をすると、[[時空]]の次元を {{mvar|D}} とするとき、弦の振動は {{math|''D'' &minus; 2}} 個の独立な[[調和振動子#量子的な調和振動子|量子調和振動子]]（各々は[[横波]]）の集まりと見ることができて、[[基本周波数|基本振動数]]、すなわち弦の振動数の中で最も小さいものを {{mvar|ν}} とすると振動子のエネルギーにおける {{mvar|n}} 番目の振動子の寄与は {{math|{{sfrac|''hνn''|2}}}} と表せるので{{efn|{{mvar|h}} は[[プランク定数]]。[[振動数]] {{mvar|&nu;}} の[[逆数]]はその振動の[[周期]] {{mvar|τ}} を表し、振動数と周期の積は {{math|''ντ'' {{=}} 1}} である。振動数に似たものに[[角振動数]] {{mvar|ω}} があり、角振動数と振動数の間には {{math|''ω'' {{=}} 2{{π}}''ν''}} という関係がある。[[三角関数]]の周期は {{math|2{{π}}}} であるため、物理学の文献では振動数でなく角振動数が好んで用いられる。それに合わせてプランク定数 {{mvar|h}} を {{math|2{{π}}}} で割った[[ディラック定数|換算プランク定数]]（ディラック定数）{{math|{{hbar}} {{coloneqq}} ''h''/2{{pi}}}} がしばしば用いられる。{{math|''ν'', ''h''}} および {{math|''ω'', {{hbar}}}} の積は互いに等しい ({{math|1=''hν'' = ''{{hbar}}ω''}})。}}、件の級数を用いれば全ての振動数に亘る和を計算すると {{math|&minus;{{sfrac|''hν''(''D'' &minus; 2)|24}}}} が得られる。最終的には、この事実に{{仮リンク|ゴダード・ソーンの定理|en|Goddard–Thorn theorem}}を合わせて、ボゾン弦理論が 26 次元でないと無矛盾にならないことが導かれる。また、これに超対称性を取り入れた超弦理論は９次元（+時間1次元で計10次元）において無矛盾であることが示される。

級数 {{math|1 + 2 + 3 + 4 + …}} の計算は一次元の[[スカラー場]]に対する[[カシミール力]]の計算にも関わってくる。指数的カットオフ関数は級数を滑らかにするのに充分で、これは高エネルギー状態が導電性板によってブロックされないという事実を表している。この問題の空間対称性はこの展開の二次の項がキャンセルされることの原因である。残るのは定数項 {{math|&minus;{{sfrac|1|12}}}} であるが、この負符号はカシミール力が吸引力であるという事実を反映している{{sfn|Zee|2003|pp=65-67}}。

同様の計算は 3 次元でも存在し、リーマンゼータの代わりに[[エプスタインのゼータ関数|エプスタインゼータ]]が用いられる{{sfn|Zeidler|2007|pp=305-306}}。

== メディアでの扱い ==
{{仮リンク|デーヴィッド・リーヴィット|en|David Leavitt}}の小説 ''The Indian Clerk'' には、ハーディと[[ジョン・エデンサー・リトルウッド|リトルウッド]]がこの級数について議論するシーンが出てくる{{sfn|Leavitt|2007|pp=61-62}}。[[サイモン・マクバーニー]]の2007年の作品 ''[[:en:A Disappearing Number|A Disappearing Number]]'' では舞台の冒頭でこの級数が取り上げられている{{sfn|Thomas|2008}}。

2014年1月9日、YouTube の番組 [[:en:Numberphile|Numberphile]] でこの級数に関する動画が投稿され<ref>{{YouTube
|id = w-I6XTVZXww
|title = ASTOUNDING: 1 + 2 + 3 + 4 + 5 + ... = -1/12
}}</ref>、公開から1ヶ月間で 150 万以上の再生数を獲得した<ref name="Overbye">{{Citation
|first = Dennis
|last = Overbye
|date = February 3, 2014
|title = In the End, It All Adds Up to – 1/12
|url = http://www.nytimes.com/2014/02/04/science/in-the-end-it-all-adds-up-to.html
|accessdate = February 3, 2014
|work = New York TImes
}}</ref>。動画は 8 分間で[[ノッティンガム大学]]の物理学者、{{仮リンク|トニー・パディーヤ|en|Tony Padilla}}が解説をしている。パディーヤは {{math|''S''{{sub|1}} {{=}} 1 &minus; 1 + 1 &minus; 1 + …}} と {{math|''S''{{sub|2}} {{=}} 1 &minus; 2 + 3 &minus; 4 + …}} から始め、最後に {{math|''S'' {{=}} 1 + 2 + 3 + 4 + …}} を、ラマヌジャンの議論と同様に項別の引き算を用いてそれらの級数の関連性を述べている。Numberphile はノッティンガム大学の物理学者、エド・コープランドを招いた 21 分の動画も制作しており、[[発散級数#アーベル和|アーベル和]]として {{math|''S''{{sub|2}} {{=}} 1 &minus; 2 + 3 &minus; 4 + … {{=}} {{sfrac|1|4}}}} となること、{{math|''ζ''(&minus;1)}} として {{math|''S'' {{=}} 1 + 2 + 3 + 4 + … {{=}} &minus;{{sfrac|1|12}}}} となることについて、より詳細に解説している<ref>{{YouTube
|id = E-d9mgo8FGk
|title = Sum of Natural Numbers (second proof and extra footage)
}}</ref> 。
後日、最初の動画が厳密性に欠けているという批判があり、パディーヤは彼のウェブページで、動画の中で行った操作と実際に行われている {{en|relevant}} な[[ディリクレ級数]]に対する[[解析接続]]との関係についての解説を書いている<ref>{{Citation
|first = Tony
|last = Padilla
|title = What do we get if we sum all the natural numbers?
|url = http://www.nottingham.ac.uk/~ppzap4/response.html
|accessdate = February 3, 2014
}}</ref>。
[[ニューヨーク・タイムズ]]の Numberphile の動画に関する記事で、数学者の{{仮リンク|エドワード・フレンケル|en|Edward Frenkel}}は次のようにコメントしている<ref name="Overbye" />。「''この計算は数学界における最高の秘密の一つだろう。外部の人間は誰もそれについて知らないのだ'' 」。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{reflist|group="注釈"}}
=== 出典 ===
{{div col}}
{{reflist}}
{{div col end}}
== 参考文献 ==
;数学関連
*{{citation
|last = Lepowsky
|first = J.
|date = 1999
|editor = Naihuan Jing and Kailash C. Misra
|title = Vertex operator algebras and the zeta function
|booktitle = Recent Developments in Quantum Affine Algebras and Related Topics
|series = Contemporary Mathematics
|volume = 248
|pages = 327–340
|arxiv = math/9909178
|ref = harv
}}
*{{citation
|last = Gannon
|first = Terry
|date = April 2010
|title = Moonshine Beyond the Monster: The Bridge Connecting Algebra, Modular Forms and Physics
|publisher = Cambridge University Press
|page = 140
|ref = harv
}}
*{{citation
|last = Pengelley
|first = David J.
|date = 2002
|title = The bridge between the continuous and the discrete via original sources
|editor = Otto Bekken et al
|booktitle = Study the Masters: The Abel-Fauvel Conference
|publisher = National Center for Mathematics Education, University of Gothenburg, Sweden
|page = 3
|ref = harv
}}
*{{citation
|author = Ramanujan, S.
|title = Ramanujan's Notebooks
|url = http://www.imsc.res.in/~rao/ramanujan/NoteBooks/NoteBook1/chapterVIII/page3.htm |accessdate = January 26, 2014
|ref = Ramanujan-Notebook-1-8
}}
*{{citation
|first = Wazir Hasan
|last = Abdi
|date = 1992
|title = Toils and triumphs of Srinivasa Ramanujan, the man and the mathematician
|publisher = National
|page = 41
|ref = harv
}}
*{{citation
|first = Bruce C.
|last = Berndt
|date = 1985
|title = Ramanujan’s Notebooks: Part 1
|publisher = Springer-Verlag
|pages = 135–136
|ref = harv
}}
*{{cite book
|author = Berndt, Bruce C., Srinivasa Ramanujan Aiyangar, and Robert A. Rankin
|title = Ramanujan: letters and commentary
|year = 1995
|publisher = American Mathematical Society
|isbn = 0-8218-0287-9
}}
*{{cite book
|last = Hardy
|first = G.H.
|authorlink = ゴッドフレイ・ハロルド・ハーディ
|title = Divergent Series
|year = 1949
|publisher = Clarendon Press
|id = {{LCC|QA295|.H29|1967}}
|ref = harv
}}
*{{cite journal
|last = Euler
|first = Leonhard
|title = Remarques sur un beau rapport entre les séries des puissances tant directes que réciproques
|journal = Memoires de l'academie des sciences de Berlin
|year = 1768
|volume = 17
|pages = 83–106
|ref = harv
}}
**翻訳：{{cite web
|author = Euler, Leonhard; Lucas Willis; and Thomas J Osler
|title = Transl ation with notes of Euler's paper: Remarks on a beautiful relation between direct as well as reciprocal power series
|year = 2006
|publisher = The Euler Archive
|url = http://www.math.dartmouth.edu/~euler/pages/E352.html
|accessdate = 2007-03-22
}}
*{{cite book
|last = Knopp
|first = Konrad
|authorlink = :en:Konrad Knopp
|title = Theory and Application of Infinite Series
|year = 1990
|origyear = 1922
|publisher = Dover
|isbn = 0-486-66165-2
|ref = harv
}}
*{{citation
|first = Jeffrey
|last = Stopple
|date = 2003
|title = A Primer of Analytic Number Theory: From Pythagoras to Riemann
|isbn = 0-521-81309-3
|page = 202
|ref = harv
}}
*{{citation
|first = Terence
|last = Tao
|authorlink = テレンス・タオ
|date = April 10, 2010
|title = The Euler-Maclaurin formula, Bernoulli numbers, the zeta function, and real-variable analytic continuation
|url = http://terrytao.wordpress.com/2010/04/10/the-euler-maclaurin-formula-bernoulli-numbers-the-zeta-function-and-real-variable-analytic-continuation/
|accessdate = January 30, 2014
|year = 2010
|ref = harv
}}
;物理学関連
*{{cite book
|last = Zee
|first = A.
|title = Quantum field theory in a nutshell
|year = 2003
|publisher = Princeton UP
|isbn = 0-691-01019-6
|re f= harv
}}
*{{citation
|title = Quantum Field Theory I: Basics in Mathematics and Physics: A Bridge between Mathematicians and Physicists
|first = Eberhard
|last = Zeidler
|publisher = Springer
|year = 2007
|isbn = 9783540347644
|pages = 305–306
|url = http://books.google.com/books?id=XYtnGl9enNgC&pg=PA305
|ref = harv
}}
;一般書・小説
*{{Citation
|first = David
|last = Leavitt
|authorlink = :en:David Leavitt
|date = 2007
|title = The Indian Clerk
|publisher = Bloomsbury
|pages = 61–62
|ref = harv
}}
*{{Citation
|first = Rachel
|last = Thomas
|date = December 1, 2008
|title = A disappearing number
|work = Plus
|url = http://plus.maths.org/content/disappearing-number
|accessdate = February 5, 2014
|ref = harv
}}

== 関連文献 ==
*{{cite journal
|last = Lepowsky
|first = James
|title = Vertex operator algebras and the zeta function
|journal = Contemporary Mathematics
|volume = 248
|year = 1999
|pages = 327–340
|arxiv = math/9909178
}}
*{{cite book
|last = Zwiebach
|first = Barton
|title = A First Course in String Theory
|year = 2004
|publisher = Cambridge UP
|isbn = 0-521-83143-1
}} See p.&nbsp;293.
*{{Citation
|first = Masanobu
|last = Kaneko
|first2 = Nobushige
|last2 = Kurokawa
|first3=  Masato
|last3 = Wakayama
|date = 2003
|title = A variation of Euler's approach to values of the Riemann zeta function
|journal = Kyushu Journal of Mathematics
|volume = 57
|issue = 1
|pages = 175–192
|doi = 10.2206/kyushujm.57.175
|arxiv = 0206171
|url = http://catalog.lib.kyushu-u.ac.jp/opac/repository/100000/handle/2324/11683/57_175.pdf
|accessdate = January 31, 2014
}}
*{{cite conference
|first = Emilio
|last = Elizalde
|title = Cosmology: Techniques and Applications
|booktitle = Proceedings of the II International Conference on Fundamental Interactions
|year = 2004
|arxiv = gr-qc/0409076
}}
*{{Citation
|first = G. N.
|last = Watson
|date = April 1929
|title = Theorems stated by Ramanujan (VIII): Theorems on Divergent Series
|journal = Journal of the London Mathematical Society
|series = 1
|volume = 4
|issue = 2
|pages = 82–86
|doi = 10.1112/jlms/s1-4.14.82
}}

== 外部リンク ==
*[http://math.ucr.edu/home/baez/week124.html This Week's Finds in Mathematical Physics (Week 124)], [http://math.ucr.edu/home/baez/week126.html (Week 126)], [http://math.ucr.edu/home/baez/week147.html (Week 147)], [http://math.ucr.edu/home/baez/week213.html (Week 213)]
**[http://math.ucr.edu/home/baez/qg-winter2004/zeta.pdf Euler’s Proof That 1 + 2 + 3 + · · · = −1/12] - By [[:en:John Baez|John Baez]]
**{{cite web|url=http://math.ucr.edu/home/baez/numbers/24.pdf |title=My Favorite Numbers: 24 |author=John Baez |date=September 19, 2008 |accessdate=2010-04-22}}
*[http://terrytao.wordpress.com/2010/04/10/the-euler-maclaurin-formula-bernoulli-numbers-the-zeta-function-and-real-variable-analytic-continuation/ The Euler-Maclaurin formula, Bernoulli numbers, the zeta function, and real-variable analytic continuation] by [[テレンス・タオ|Terence Tao]]
*[http://motls.blogspot.co.uk/2014/01/a-recursive-evaluation-of-zeta-of.html A recursive evaluation of zeta of negative integers] by [[:en:Luboš Motl|Luboš Motl]]
**[http://www.youtube.com/watch?v=E-d9mgo8FGk&feature=youtu.be Sum of Natural Numbers (second proof and extra footage)] オイラーの方法の解説がある。
**[http://www.nottingham.ac.uk/~ppzap4/response.html What do we get if we sum all the natural numbers?] response to comments about video by [[:en:Tony Padilla|Tony Padilla]]
**[http://www.nytimes.com/2014/02/04/science/in-the-end-it-all-adds-up-to.html?hpw&rref=science Related article from New York TImes]
*[http://math.arizona.edu/~cais/Papers/Expos/div.pdf Divergent Series: why 1 + 2 + 3 + · · · = −1/12] アリゾナ大学の Brydon Cais による

{{級数}}

{{DEFAULTSORT:1+2+3+4+...}}
[[Category:級数]]
[[Category:数学に関する記事|/1いちたすにたすさんたすよんたす]]