球体のソースを表示

{{Otheruses||MUCCのアルバム|球体 (MUCCのアルバム)|三浦大知のアルバム|球体 (三浦大知のアルバム)}}
{{no footnotes|date=March 2013}}
[[File:Sphere wireframe.svg|thumb|In [[Euclidean space]], A '''ball''' is the inside of a sphere]]
[[数学]]における'''球体'''（きゅうたい、{{lang-en-short|''ball''}}）は[[球面]]の内側の空間全体を言う。それが[[境界 (位相空間論)|境界]]点の全体である球面を全く含むとき'''閉球体'''（へいきゅうたい、{{lang-en-short|''closed ball''}}）、全く含まないとき'''開球体'''（かいきゅうたい、{{lang-en-short|''open ball''}}）と呼ばれる。

これらの概念は三次元[[ユークリッド空間]]のみならず、より低次または高次の空間、あるいはより一般の[[距離空間]]において定義することができる。{{mvar|n}}-次元の'''球体'''は '''{{mvar|n}}-次元（超）球体'''（あるいは短く {{mvar|n}}-球体）と呼ばれ、その境界は[[超球面|'''{{math|(''n''&minus;1)}}-次元（超）球面''']]（あるいは短く {{math|(''n''&minus;1)}}-球面）と呼ばれる。例えば[[ユークリッド平面]]における球体は[[円板]]のことであり、それを囲む境界は[[円周]]である。また、三次元ユークリッド空間における球体（通常の球体）は[[球面|二次元球面]]（通常の球面）によって囲まれる[[体積]]を占める。

[[ユークリッド幾何学]]などの文脈において、'''球体''' (''ball'') の意味でしばしば略式的に'''球''' (''sphere'') と呼ぶ場合がある（'''球'''が球面の意である場合もある）。

== ユークリッド空間における球体 ==
{{mvar|n}}-次元ユークリッド空間において、中心 {{mvar|x}}, 半径 {{mvar|r}} の'''開球体'''とは、{{mvar|x}} からの距離が {{mvar|r}} 未満（{{math|「距離」< ''r''}}）であるような点全体の成す集合を言う。'''閉球体'''は {{mvar|x}} からの距離が {{mvar|r}} 以下（{{math|「距離」&le; ''r''}}）であるような点全体の成す集合である。

{{mvar|n}}-次元ユークリッド空間において任意の球体は[[超球面]]の内側（超球体）であり、特に {{math|''n'' {{=}} 1}} のときは有界[[区間 (数学)]]、{{math|''n'' {{=}} 2}} のときは[[円周|円]]の囲む内側である[[円板]]、{{math|''n'' {{=}} 3}} のとき通常の[[球面]]の囲む内側である。

=== 体積 ===
: {{main|[[超球体の体積]]}}
{{mvar|n}}-次元ユークリッド空間における、半径 {{mvar|R}} の {{mvar|n}}-次元ユークリッド超球体の {{mvar|n}}-次元超体積は
: <math>V_n(R) = \frac{\pi^{n/2}}{\Gamma(\frac{n}{2} + 1)}R^n</math>
で与えられる<ref>Equation 5.19.4, ''NIST Digital Library of Mathematical Functions.'' http://dlmf.nist.gov/, Release 1.0.6 of 2013-05-06.</ref>。ただし {{mvar|Γ}} は[[レオンハルト・オイラー|オイラー]]の[[ガンマ函数]]（[[階乗]]の非整数引数への拡張と見做される）。整数値または半整数値における{{仮リンク|ガンマ函数の特殊値|en|particular values of the gamma function}}の明示公式を用いれば、ガンマ函数の値の評価を抜きにして、ユークリッド超球面の体積は
:<math>V_{2k}(R) = \frac{\pi^k}{k!}R^{2k},</math>
:<math>V_{2k+1}(R) = \frac{2^{k+1}\pi^k}{(2k+1)!!}R^{2k+1} = \frac{2(k!)(4\pi)^k}{(2k+1)!}R^{2k+1}</math>
で与えられることがわかる。奇数次元の場合の式に現れる[[二重階乗]] {{math|(2{{mvar|k}} + 1)!!}} は {{math|(2''k'' + 1)!! {{=}} 1 &middot; 3 &middot; 5 &middot;&middot;&middot; (2{{mvar|k}} &minus; 1) &middot; (2{{mvar|k}} + 1)}} と定義されるものである。

== 一般の距離空間における球体 ==
[[距離空間]] {{math|(''M'',''d'')}}、即ち集合 {{mvar|M}} に[[距離函数]] {{mvar|d}} を併せて考えたものにおいて、{{mvar|M}} の点 {{mvar|p}} を中心とする半径 {{math|''r'' > 0}} の'''開（計量）球体''' {{math|''B'' {{sub|''r''}}(''p'')}}（あるいは {{math|''B''(''p''; ''r'')}} は
: <math>B_r(p) \triangleq \{ x \in M \mid d(x,p) < r \}</math>
で定義され、'''閉（距離）球体''' {{math|''B'' {{sub|''r''}}[''p'']}}（あるいは {{math|''B''[''p''; ''r''], {{math|{{overline|''B''}}{{sub|''r''}}(''p'')}}}}）は
: <math>B_r[p] \triangleq \{ x \in M \mid d(x,p) \le r \}</math>
で定義される。

上記において {{math|''r'' > 0}} としているので、球体は（開閉何れも）必ず中心の点 {{mvar|p}} は含むことに注意。

通例のように[[閉包 (位相空間論)|閉包]]を上付きの横棒で表すものとすると、{{math|''B''{{sub|''r''}}(''p'') &sube; {{overline|''B''{{sub|''r''}}(''p'')}}}} および {{math|{{overline|''B''{{sub|''r''}}(''p'')}} &sube; ''B''{{sub|''r''}}[''p'']}} は必ず成り立つが、いっぽう {{math|{{overline|''B''{{sub|''r''}}(''p'')}} {{=}} ''B''{{sub|''r''}}[''p'']}} は必ずしも成立し{{em|ない}}。例えば[[離散距離空間]] {{mvar|X}} において
: <math>\overline{B_1(p)} = \{p\} \ne B_1[p] = X\quad (\forall p \in X)</math>
となることが確かめられる。

半径 {{math|1}} の球体、開球体、閉球体をそれぞれ'''[[単位球体]]'''、単位開球体（開単位球体）、単位閉球体（閉単位球体）と呼ぶ。

距離空間の部分集合が[[有界]]であるとは、それが適当な球体にまったく含まれることを言う。また[[全有界]]であるとは任意に与えた半径を共通して持つ球体の有限個を用いて必ず被覆できるときに言う。

[[距離空間]]においてその開球体全体は、[[位相空間|位相]]の[[基 (位相空間論)|開基]]として、その任意の開集合を開球体の[[合併 (数学)|合併]]に表すことができる。このように得られる[[位相空間]]は、距離函数 {{mvar|d}} の'''誘導する位相'''を備えていると言う。

== ノルム空間における球体 ==
[[ノルム]] {{math|{{norm|·}}}} を備える[[ノルム線型空間]] {{mvar|V}} は、距離函数 {{math|''d''(''x'',''y'') :{{=}} {{abs|''x'' &minus; ''y''}}}} を備える距離空間でもある。このような空間において任意の球体 {{math|''B''{{sub|''r''}}(''p'')}} は、単位球体 {{math|''B''{{sub|''r''}}(0)}} を {{mvar|r}}-倍に拡縮して {{mvar|p}} だけ平行移動したものになっている。

先に述べたユークリッド球体はノルム空間における球体のひとつの例になっている。

=== {{mvar|p}}-ノルム ===
[[数ベクトル空間]] {{math|'''R'''{{sup|''n''}}}} に {{仮リンク|pノルム|label= {{mvar|p}}-ノルム|en|p-norm}} {{math|''L''{{sub|''p''}}}} を与えたノルム空間において、開球体とは
: <math>B(r) = \left\{ x \in \mathbb{R}^n \mid \sum_{i=1}^n \left|x_i\right|^p < r^p \right\}</math>
なる集合のことである。

特に {{math|''n'' {{=}} 2}} として、{{math|''L''{{sub|1}}}}（タクシー距離、[[マンハッタン距離]]）に関する球体は対角線が軸と平行な正方形であり、{{math|''L''{{sub|&infin;}}}}（[[チェビシェフ距離]]）に関する球体は辺が軸と平行な正方形になる。他の値の {{mvar|p}} に対しては{{仮リンク|ラメ曲線|en|Lamé curve}}（劣楕円または超楕円）になる。

同じく、{{math|''n'' {{=}} 3}} のとき、{{math|''L''{{sub|1}}}}-球体は立体としての対角線が軸と平行となるような八面体であり、{{math|''L''{{sub|&infin;}}}}-球体は辺が軸と平行な立方体、{{math|''L''{{sub|''p''}}}} ({{math|''p'' &gt; 2}}) に対しては{{仮リンク|超楕円体|en|superegg}}になる。

=== 一般の凸ノルム ===
より一般に、{{math|'''R'''{{sup|''n''}}}} の[[点対称]]な[[有界]][[凸集合|凸]][[開集合]] {{mvar|X}} が与えられたとき、任意の開球体が {{mvar|X}} を適当な大きさの拡縮を一様に行って平行移動したものとなっているような {{math|'''R'''{{sup|''n''}}}} 上の[[ノルム]]を定義することができる。この定理は「開集合」を「閉集合」に置き換えると成立しない（実際、原点のみからなる集合は閉集合だが、これは {{math|'''R'''{{sup|''n''}}}} のノルムを定めない）。

== 位相球体 ==
より一般に、距離から導かれる位相とは限らない位相を備えた任意の[[位相空間]] {{mvar|X}} においても球体について述べることができる。{{mvar|X}} の部分集合は、それが {{mvar|n}}-次元ユークリッド（開、閉）球体に[[同相]]となるとき、{{mvar|X}} の {{mvar|n}}-次元'''位相（開、閉）球体'''と呼ばれる。{{mvar|n}}-次元位相球体は{{仮リンク|組合せ論的位相幾何学|en|combinatorial topology}}において、{{仮リンク|胞複体|en|Cell complex}} の構成ブロックとして重要である。

任意の {{mvar|n}}-次元位相開球体は数空間 {{math|'''R'''{{sup|''n''}}}} に同相であり、また {{mvar|n}}-次元単位開[[超立方体]] {{math|(0,1){{sup|''n''}}}} にも同相である。同様に、任意の {{mvar|n}}-次元位相閉球体は {{mvar|n}}-次元単位閉超立方体 {{math|[0,1]{{sup|''n''}}}} に同相である。

{{mvar|n}}-次元球体が {{mvar|m}}-次元球体と同相となる必要十分条件は {{math|''n'' {{=}} ''m''}} となることである。{{mvar|n}}-次元開球体 {{mvar|B}} と {{math|'''R'''{{sup|''n''}}}} との間の同相写像は、{{mvar|B}} の取り得る二つの[[向き|位相的向き]]として理解することができる二つの類に類別することができる。

{{mvar|n}}-次元位相球体は[[可微分多様体|滑らか]]でなくともよいが、滑らかとなる場合は {{mvar|n}}-次元ユークリッド球体と[[微分同相]]でなければならない。

== 関連項目 ==
* [[球]]: 日常的な意味で
* [[円板]]
* {{仮リンク|虚球|en|Formal ball}}: 負の半径を許す
* [[近傍 (位相空間論)]]
* [[三次元球面]]
* [[超球面]]（高次元球面）
* [[アレクサンダーの角付き球面]]
* [[多様体]]
* [[超球体の体積]]

== 参考文献 ==
{{Reflist}}
*D. J. Smith and M. K. Vamanamurthy, "How small is a unit ball?", ''[[Mathematics Magazine]]'', 62 (1989) 101&ndash;107.
*"Robin conditions on the Euclidean ball", J. S. Dowker [http://www.citebase.org/fulltext?format=application/pdf&identifier=oai:arXiv.org:hep-th/9506042]
*"Isometries of the space of convex bodies contained in a Euclidean ball", Peter M. Gruber[http://www.springerlink.com/content/0v74h15104232532/]
{{Expand section|date=December 2009}}

== 外部リンク ==
* {{MathWorld|urlname=Ball|title=Ball}}
* [http://planetmath.org/ball ball] {{PlanetMath|urlname=|title=}}

{{立体}}
{{DEFAULTSORT:きゆうたい}}
[[Category:球]]
[[Category:球面]]
[[Category:計量幾何学]]
[[Category:位相幾何学]]
[[Category:数学に関する記事]]