差積のソースを表示

[[代数学]]における {{mvar|n}} 個の変数 {{math|''X''{{sub|1}}, …, ''X{{sub|n}}''}} に関する'''差積'''（させき、{{lang-en-short|product of differences, difference product}}）とは <math display="block">V_n := \prod_{1\le i<j\le n} (X_j-X_i)</math> で与えられる[[多項式]] {{mvar|V{{sub|n}}}} を言う。{{ill2|アレクサンドル゠テオフィル・ヴァンデルモンド|en|Alexandre-Théophile Vandermonde}} に因んで'''ヴァンデルモンド多項式'''とも、あるいはまた[[ヴァンデルモンド行列]]の[[行列式]]として'''ヴァンデルモンド行列式'''とも呼ばれる。

; 注意
: この多項式が項の順番によって変化することに注意すべきである。すなわち、差積は[[交代式]]であって[[対称式]]でない。{{efn|name="ch2"|考えている[[可換体|体]]あるいは[[環 (数学)|環]]は{{nowrap|[[標数]] {{math|2}}}} でないものと仮定する。{{nowrap|標数 {{math|2}}}} では交代式と対称式は同じ概念になる。}}
: 文献によっては逆順の {{mvar|X{{sub|i}} &minus; X{{sub|j}}}} ({{math|''i'' < ''j''}}) を掛けるものと定義するものもある。この場合、上記の式とは全部で <math display="inline">\binom{n}{2}</math> 個ある各項の符号が変わるので、 {{mvar|n}} が偶数のとき一致するが奇数のときは符号が逆になる。

== 交代多項式 ==
{{main|[[交代式]]}}
差積を定義づける著しい性質はその変数の入れ替えに関する交代性である。つまり、変数 {{mvar|X{{sub|i}}}} たちのなす[[順序組|順序付けられた {{mvar|n}}-組]]に、[[奇置換]]を施したときには差積の符号が変わるが、その一方で[[偶置換]]を施しても差積の値は変化しない。実は差積は、もっとも単純な交代式（最簡交代式; the basic alternating polynomial) として特徴づけられる（後述）。

変数の順番を入れ替えると符号が変わることから、何れかふたつの変数が等しいときその差積は零に等しい。これは差積についてはその定義式から直接言えることではあるが、交代性からの帰結として交代式全般が持つ特徴である。すなわち、等しい二つの変数を互いに入れ替えても式は変わらない（が符号は変化する）から {{mvar|1=V{{sub|n}} = &minus;V{{sub|n}}}}, すなわち {{math|1=''V{{sub|n}}'' = 0}} を得る。{{efn|name="ch2"}}

逆に、差積は任意の交代多項式を整除する。実際、先に述べた通り、任意の交代式はどの二つの変数についてもそれらが等しいとき零となるのだったから、[[因数定理]]により、任意の {{math|''i'' < ''j''}} に対する {{mvar|X{{sub|i}} &minus; X{{sub|j}}}} が交代式の因数となる。帰結として
; 命題 (交代式の特徴づけ)
: 任意の交代多項式は、差積と[[対称多項式]]との積として書ける。

== 判別式 ==
{{main|判別式}}
差積の平方は（等しいものがあるかどうかを判別する）[[判別式]]として広く知られる（が、差積自身を判別式とする文献もある{{要出典|date=2019年4月}}）。

{{math|1=(&minus;1){{sup|2}} = 1}} に注意すれば、差積の平方である判別式 {{math|&Delta; {{coloneqq}} ''V{{sub|n}}''{{sup|2}}}} は、変数の入れ替えによって変化しない[[対称式]]であることは明らかである。すなわち、差積は与えられた変数の[[集合]]（非順序組）に対して定まる不変式となる。

{{mvar|n}}-変数対称多項式環 {{math|Λ{{sub|''n''}}}} に差積を添加して得られる{{ill2|二次拡大|en|quadratic extension}} <math display="inline">\Lambda_n[V_n]/\langle V_n^2-\Delta\rangle</math> として {{mvar|n}}-変数交代多項式環を表すことができる。

== 多項式の根の差積 ==
多項式が一つ与えられれば、その多項式の根の差積はその多項式の（最小）[[分解体]]に係数を持つ多項式として定まる。与えられた多項式が[[モニック多項式|最高次係数 {{math|1}}]] でないときは、最高次係数（それをいまは {{mvar|a}} とする）を掛けた <math display="block">V_n = a^{n-1}\prod_{1\le i<j\le n} (X_j-X_i)</math> をヴァンデルモンド多項式とするほうが、多項式の判別式のよくある定義と整合（ヴァンデルモンド多項式の平方が判別式に一致）する。

== 一般化 ==
任意の環上で考えるなら、交代多項式は差積とは別の多項式をもとに考えたほうが都合がよい{{harv|Romagny|2005}}。

=== ワイルの指標公式 ===
{{main|ワイルの指標公式}}

これは極めて一般化した状況ではあるが、差積を[[ワイルの指標公式]]の特別の場合と見なすことができる。具体的には、[[特殊ユニタリ群]] {{math|''SU''(''n'')}} に対する（[[自明表現]]の場合にあたる）[[ワイルの分母公式]]に差積が現れる。

== 関連項目 ==
* {{ill2|カペリ多項式|en|Capelli polynomial}}<ref>{{google books|title=Polynomial Identities and Asymptotic Methods|id=ZLW_Kz_zOP8C|pg=PA12|text=alternating+polynomial}}</ref>

== 注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{notelist}}
=== 出典 ===
{{reflist}}
== 参考文献 ==
* [http://perso.univ-rennes1.fr/matthieu.romagny/notes/FTAF.pdf The fundamental theorem of alternating functions], by Matthieu Romagny, September 15, 2005

== 外部リンク ==
* {{ProofWiki|urlname=Definition:Product_of_Differences|title=Definition:Product of Differences}}

{{DEFAULTSORT:させき}}
[[Category:多項式]]
[[Category:対称函数]]
[[Category:数学に関する記事]]